★枯れ時計
「アンティーク時計」に特に決まった定義はありません。
古い時計の通称と考えていいでしょう。
もし目の前に50年前に製造された1本の古い時計があるとします。
見るからに文字盤は焼けてシミやくすみがあり相応に経年変化しています。
所どころ文字やメモリも掠れ見難いです。
目を凝らすと針もやや錆っぽいです。夜光も光らないようです。
今では製造当時の面影もなく正確性も光沢も艶もありません。
防水性もきっと弱くなっていることでしょう。
リューズの巻き上げもややぎこちないかもしれません。
でもひとつだけ素晴らしい点があります。
それは古い様相を呈してはいるものの
今なお時を刻み続けているということです。
ゼンマイを巻き上げて息吹を与えると耳元でカチッカチッと
小さいながらもしっかりした音を立てて針が動いていることです。
動き続けているのは見方を変えればそれらはおそらく紆余曲折しながら
変遷したであろう幾多の国の多くのオーナーのそれぞれが
その「古時計」を愛しみ大切に扱ってきた証とも考えられます。
その時々のオーナーの腕元でそれぞれの人生の大事な「時」を
共有してきた証とも言えます。
だからこそ私たちは時計にある「焼け」「シミ」「くすみ」「錆」
「剥がれ」「かすれ」「キズ」はそれぞれのその時計の持つ
「歴史」「個性」「勲章」だと考えるのです。
今回はその「歴史」「個性」「勲章」を持つ時計を
「枯れ時計」と称してここにご紹介したいと思います。
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